創インタビュー

雑誌「創」５月号掲載インタビュー（前半）
後半部分は、２７日か２８日の予定

●はじめに　　　編集部

　本誌前号の上祐史浩元代表のインタビューは大きな反響を呼んだ。ちょうど本誌前号発売とほぼ時期を同じくして３月７日に上祐派約６０人がアーレフを脱会。５月頃までに新団体を立ち上げることを正式に表明したからだ。その背後にどんな内部対立があったのか、公式情報だけではなかなかわかりにくい内部事情を前号のインタビューはわかりやすく伝えていた。

　さて、それに続いて今月は新代表となった野田成人さんのインタビューを掲載する。代表就任後、幾つかのマスコミに登場してはいるが、さらなる分裂騒動ともいうべき現在のアーレフの内部事情を詳細に伝えたものはあまりない。特に松本家との微妙な関係については、詳しくはほとんど報道されていないと言ってよい。

　気になるのは、こんなふうに新たな分裂状態に陥った教団が今後どうなるのか、そして公安がどう揺さぶりをかけてくるかである。上祐元代表率いる新団体へ向けた動きも加速する中で、５月へかけてさらに大きな動きが出てくる可能性もある。凄惨な一連のオウム事件から約１０年、教団は今、大きな局面を迎えているといってよい。最後に残された教団多数派のＡ派が今後どういう動きをするのか、次号ではぜひ彼らにもインタビューを行いたいと思う。（篠田博之）


◆役員会と合同会議が対立
◆教団は二重権力状態に


――野田さんが新たな代表に就任したのは２月１０日のアーレフの役員会だったとされているわけですが、これは当時代表だった上祐さんと、野田さん村岡さんら役員が集まったわけですね。

野田　世田谷の烏山道場のあるマンションの上祐の部屋で話をしました。組織としては正式な役員会「正悟師・正大師会議」になります。出席者は僕と上祐と村岡、杉浦兄弟でした。
　そこで決まったことですから、規約上は教団としての決定になります。といっても規約というのは、あくまで外の社会に対応するために作られたものです。今までは規約上の役員と正大師、正悟師という宗教上のステージ（位階）が一致していたから問題はなかったのです。ところが、実際は松本家という存在があるから混乱してくるわけです。
　中間管理職である「師」が中心になっている「合同会議」という場があるのですが、Ａ派の彼らがどうやら裏で松本家の意向を酌んで、その「合同会議」で教団運営の中身を決めていくという現実ができてしまっているのです。


――役員会の決定が合同会議で否決されるという二重権力状態になっているわけですね。　

野田　背後に松本家の威光をちらつかされる為、正悟師もなかなか真正面から対抗できません。　
　僕が代表に就任してから３月１２日に合同会議が開かれたのですが、役員で出席したのは僕だけでした。１人対３４人で、ケンカ別れというか、意見がまるでかみ合わない形で終わりました。


――１対３４というのは、例えば荒木浩広報部長は出席しているんですか。

野田　荒木は入っていません。合同会議はあくまで「師」の会議なので、それ以上じゃないと出席できないのです。　　


――野田代表を補佐するべく副代表に就任した村岡達子さんも出席していないのですか。　　

野田　出席しても反論できない雰囲気ですから……。話し合いにならないので出席していないようです。そもそも役員の中でも杉浦兄弟や村岡は、合同会議を認めない立場をとっています。


◆教団は今、異論を
◆唱えられない雰囲気

――新たな分裂状態の中で、一般信者で役員会を支持する人はいないんですか。

野田　教団の人間は非常に観念的だから、昔のやり方そのものの流れの中で、いろんな仕組みが決まっています。そのシステムそのものが、今、合同会議の決議と連動しているので、それに対して表立っては逆らえません。
　大義名分という点でも、合同会議は、松本家の意を受けていると思われますが、「麻原絶対主義」を体現しています。僕はそれに対して、異を唱えているわけです。つまり「君らのそういう姿勢自体が、社会との摩擦、経済的な面や、住居の問題とか住民運動を起こしている。それを考え直さんと、路頭に迷うよ」と、そういう話をしているんですが、受け入れられません。


――３４人の師というのは、一枚岩にまとまっているんですか。

野田　まとまっていませんよ。ナチスドイツみたいに、反論すればゲシュタポが飛んでくるという状況にあるので、まとまっているように見えるだけです。戦中の日本で戦争反対を唱えると、特高が飛んでくる。それが恐くてものが言えない。そういう雰囲気なんですよ。
　合同会議では、あらかじめＡ派の幹部連中が結論を決めてきます。「はい、こんな感じでどうですか、皆さん」と聞くと、シーンとなって決定されます。それに対して僕が「根本的なところから、考えなおさないとだめだ」と異論を唱えるんですが、結局議論がかみあわず疲れてしまうだけなんです。


――おそらく一番対立している部分はオウム事件の総括とか社会との軋轢をどう考えるのか、麻原元代表との関係をどうするのかですよね。

野田　アーレフ広報部のホームページを見てもらえばわかりますけど、「社会との強調を重視し、事件の反省に立ち賠償を行う」と彼らも表面上は反省しています。でも、言葉だけです。お金だけ出しておけばいいと思っていますね。
　結局、事件のことについてどう思っているのか聞くと、「うーん、私たちにはわからないです」と答える。そこは事件からずっと変わっていません。


――合同会義に反発している人はみんな上祐派に行って脱会してしまったということですね。

野田　ある意味、隠れ上祐シンパもいるのですが、残っている者は教団内では声を上げられないようです。声を上げられるのは僕しかいないということですね。


◆松本家との関係をめぐり　
◆教団が分裂騒動に

――上祐さんらとの分裂騒動を野田さんらはどんなふうに見ていたのですか。

野田　この団体には「松本家は絶対」という暗黙の了解があるのですが、上祐はいろいろな写真を取り払うとか、教義の表現にしても麻原彰晃元代表を「世界でただひとりの最終解脱者」という部分を文言から抜き、ただの「解脱者」にしてしまうとか、そういう行動をとりました。これは教団にとっても松本家にとっても非常に敏感な問題だったのです。松本家の上祐への批判的な見方を受けて、信者達も「やっぱおかしいですよ」という感じになり、教団が混乱状態になっていきました。


――それが一転したきっかけが昨年の松本家四女の家出事件だったわけですが、結局、分裂騒動というのは麻原信仰に異を唱える者がパージされていった過程と考えてよいわけですか。

野田　麻原元代表絶対崇拝という立場に異を唱える者がどんどんパージされていくという構図ですね。まず最初に上祐が「グルを否定するからおかしい」、次に上祐の言うことを聞く者が排除され、野田は上祐の言うことを支持しているからおかしいとなりました。そして、野田の言うことを聞く者もおかしいとなっています。考え方の合わない者はどんどん排除していく状況になっています。


――以前、野田さんは教団の経理に関わり隠然たる力を持っていると言われていましたよね。　　　　

野田　僕が関係していたのは２０００年までです。その後は修行監督とか、道場関係に絡んでいました。


――分裂騒動の過程で上祐派が全権を掌握できなかったのは経理を押えられなかったからではないかと思いますが。

野田　それもありますが、それ以上に松本家の意向というのが強かったと思いますね。


――結局は宗教的威光が絶対という、そこが宗教団体らしいところですよね。

野田　カルトっぽいところですよ。今回僕は、その恐ろしさを実感しましたね。以前は「野田さん、一生懸命やってくれてありがとうございます」って教団内で言われていたのに、今は、手のひらを返したような対応ですから。

（つづく）