新築8
自分でリフォームするくらいなのだから、とある程度期待していた中田さんは、残念ながら期待外れ。それでもせっかく来てもらったので、作業は継続。
その日午後からは、外壁下地のボード貼り作業である。これが今回の難関。
これまでの新築では、この外壁下地に9ミリの3x10板(さんとうばん、以下サント―板)を使用。サント―板とは、大きさがタテ910ミリ、ヨコが3030ミリ。3尺かける10尺なので、サント―板と呼ぶのだが、長くて扱いづらい。これが9ミリ板の木材だから、重量が10キロちょいで、なんとか一人で持って作業することはできた。
ところが、今回は木材ではなく、タイガーexハイパーという防水石膏ボードなのだ。
石膏ボードと言えば、小生には内装用しか思い浮かばなかった。下手にぶつければ壊れ、水にぬれれば使い物にならなくなるのが、内装用石膏ボードのイメージ。よって今回、外壁下地に石膏ボードを使うと聞いた時
「石膏ボードで大丈夫なのか??」
という想いが拭えなかった。
何が心配と言えば、やはり水濡れと破損。勿論、建物の構造上、耐力壁として使用することが大臣認定されているのだそうで、他の現場でも使っているから、問題ないと言えば問題ないのだろうが。
しかし、それ以上に心配だったのが重量である。
室内のボードは、3x6(サブロク)板でも14kg超、3x8(サンパチ)板なら19kg。これがサント―板になると。。。。重いうえに長いとなると、一人で運んで作業できるのか、という問題。ちなみになぜ木の板から石膏に変わったかと言えば、ウッドショックで木の価格が大幅に上がったからである。
この問題のサント―板、職人泣かせの部材との評判だが、通常プロなら一人でやる仕事。ウチの作業員はちょっと無理だろう、ということで、二人作業。午後から若手新人見習のH君が来るので、二人で運搬・ネイラーで釘打ち。
狭い敷地で、サント―板は二階合板床の上に置いてある。これを狭い足場の間を運んで行き、設置しなければならない。しかもこのタイガーexハイパーは、釘打ちの間隔、真ん中にくる間柱含めた位置目安が、表面に記載してある。その面を外に向ける必要がある。
中田さんにしろH君にしろ、初めての作業でもあり、かなりもたついている。しかも、二枚目は裏表を逆にして外に出してしまったため、狭い足場のところでひっくり返すのに、かなり時間をかけている。明らかに一度外から中に戻した方が、場所も広いからひっくり返しやすいのに…。
小生「なぁ~にやってんだよ~」
小生も作業が進んで行かないところイラついていた。尤も当人たちにとってもそれは同じだったろう。
小生「そんなん二人でやる作業じゃないんだよ、一人でやる作業なんだよ!」
と語気を強めて言ったところ、中田さんがキレた様子で応酬してきた。
中田「うるさい!偉そうに言うな!!」
(え?)
小生「ああ、ごめんごめん」
小生から入居者に対して作業依頼する時は、こちらが雇用側ということもあり、声を荒げることもある。しかし、このように反駁してくる入居者はまずいない。
切れた状態で、もう仕事を投げ出すのか、と思い、こちらは財布からその日の日当を用意して待っていた。が、中田さんはその後も必死になって仕事を続ける。
(まあ、仕事してくれるんならいいか…)
とは言え、やはり見ていてこちらもイライラするほど不器用。
これまで中田さんが、気を利かせて色々とやってくれたことはある。しかしこちらから頼むと、指示と違う結果になったりする(例えばゴミ出しの曜日が違う、とか)。要するに、キチンと人の話が聞けないというか、我流なんだろうと思われた。リフォームも我流。なぜ中田さんが、アラフィフィでまだ生活保護状態なのかが分かった気がした。不器用な上にキレて反論する人を使いたくないのは、小生だけではなかろう。
夕方終了時間になり、その日の日当を手渡す際、キレた件をそれとなく聞いてみた。
中田「俺、野田さんの事は好きですけど、でもあの言い方はやっぱり間違ってるでしょう。俺、おかしい事はおかしいと言いますから」
確かに小生の言葉遣いに問題があったのも事実ではあるが、中田さんの問題にこちらから触れることはしなかった。ある程度距離を取っておいた方が、お互い良い関係になる。二度と現場で会う事はないだろう。
まともに手伝いできる人がいない問題だけが残った。
(つづく)
お疲れ様でした