fc2ブログ

野田成人のブログ

累積賠償額1640万円

HOMEPR 都市難民 シリーズ物 経済 ニュース イスラム国 幸福功徳 陰陽 オウム 団体存続 雑多 建築リフォーム

パチスロで作った借金総額250万円、「督促はがき」が自宅に届いて発覚…マジメな警察官がなぜ“ギャンブル依存”になったのか
文春オンライン8/21(月)6:00

 ある人がギャンブルへと追い立てられ、依存にまで至ってしまうのはなぜか。長年にわたって医療の現場を歩いてきた染谷一さんが、当事者たちを取材した『 ギャンブル依存 』(平凡社)より一部を抜粋して紹介する。

 出身地である九州の国立大学経済学部を卒業したケイ(仮名)さんだが、24歳の時に結婚した女性の父が元警官で、親類にも警察関係者が多かったため、自らも26歳で地元県警の採用試験に合格した。

 真面目で正義感が強い。そんな警察官が、どうしてギャンブル依存に陥ってしまったのか。実はケイさんは大学生の時にも一度、パチスロで150万円の借金を作り、親に返済してもらった過去があった。そして、2度目の過ちを犯してしまったのは、彼が30歳の時だ――。(全2回の1回目/ 後編 を読む)


◆◆◆

「同じ過ちは繰り返さない」

 ある休日、ケイは雑用を片づけに警察署に出向き、帰宅途中に「1円パチンコ」と書かれたのぼりが風にたなびいている店の前で足を止めた。

 このレートなら大丈夫。同じ過ちは繰り返さない。

 かつての痛い思い出は、時間とともに薄れていた。「もうあの頃の自分ではない」。自信を持ってそう言えた。ケイは30歳になっていた。社会人としても、家庭人としても分別をわきまえ、生活も思考も落ち着いていく年回りだ。「できちゃった婚」で授かった子どももどんどん成長していく。もちろん、刑事としての責任感だってしっかりと背負っているつもりだった。

 ところが、パチンコ店の自動ドアの向こう側で待ち受けていたのは、けたたましい電子音、容赦なく目を傷めつけてくるたばこの煙、それに刑事としての立場や家族までも奪い取る、泥沼の未来だった。

 *

 独特の喧騒のなかに足を踏み入れたのは何年ぶりだろうか。お試しのつもりで座った1円パチスロ台は、確かに少ない「出資」でそれなりに遊ぶことができた。賭ける金額は少なくても、手に伝わってくるスロットの感触、大当たりフラグである「リーチ目」を見たときのちょっとした興奮、短時間で手元のコインが増えていく高揚感……、あのころのように、すべてを存分に楽しんだ。儲かる、儲からないは二の次、恰好の仕事の息抜きとなった。

 うん、大丈夫。ゲームセンターのようなものだ。

 以降、仕事や家族から離れ、自分の時間を味わうために、ときおり、1円パチスロに出かけるようになっていった。

だが──。通う回数が増えると、物足りなさも大きくなっていく。かつてのしびれるような興奮は、まだケイの体内で熾火(おきび)のようにくすぶっていた。小遣いでやりくりできる勝負など、時間つぶしに過ぎない。かつて、破綻ぎりぎりで日々の生活をしのいでいた自分の記憶のストックから、大きな勝負に対する渇望がマグマのようにわき上がってくるのを抑えられなかった。

 気がつくと、自然にギャンブル性の高い台の前に座るようになっていた。勝っても負けても、店を出るころは、財布の厚みがガラリと変わっている。それまで、間延びするような時間つぶしに過ぎなかったパチンコ店での時間は、一気に密度が高まった。

 やっぱり、ギャンブルはこうでなければ……。

再び、消費者金融へ

 あっという間に、パチンコ店に出向く意味が変わり、足を運ぶ頻度も増えていく。最初は非番の日に限っていたが、仕事帰りにはパチスロ台の「リーチ目を見たい」との欲求にあらがえず、しばしば店に立ち寄るようになっていった。そこに突っ込む金額も、日に日に大きくなり、妻から受け取る月数万円の小遣いなど、すぐに底をつく。

 自分にギャンブルと借金の「前歴」があることは忘れていない。それはいつだって、ある種の後悔、黒い歴史として心のなかでうごめいていた。再び自分が同じ過ちに向かって転がっているなどと、職場である警察にはもちろん、家族にも絶対に秘密にしなければならない。世間的には、「マジメな夫」「仕事熱心な警察官」を貫き通す。頭ではわかっているつもりだった。だが、表層を取り繕ってごまかしていること自体が、「自分はわかっていない」という現実には気づかずにいた。

 スロットのスピンを止める指先の感触、大当たりでジャラジャラとコインが出てくる景気のいい音が、家族の生活を支える大黒柱として、そして街の治安を背負う公務員として、ずっと培ってきた理性を麻痺させ始めていた。

 ある給料前の休日。財布のなかには十分な資金がなかった。それでも、脳内では3つ並んだ「7」が手招きしてくる。それを振り払うことができずに、とうとう一線を越え、消費者金融で5万円を調達した。足早に出向いたパチンコ店では、かなりの幸運に恵まれた。

 たまたま座った台が当たりだったらしく、たいした時間もかからずに15万円ほど勝つことができた。

 5万円を消費者金融に返しに行けば、手元には10万円が残る。妻子持ちの公務員にとっては、なかなかの大金だ。ここで目を覚まし、危うくなっている自分自身の理性を立て直すチャンスでもある。ところが、そうではなかった。

本当のギャンブル依存へと足を踏み込んでしまった瞬間
「こんなに勝てるじゃないか。5万円の返済は後回しにして、15万円を元手にもっと増やそう」

 ギャンブル依存者に共通する思考形態だ。ぎりぎりのところで踏みとどまっていた(かに思えた)ケイが、本当のギャンブル依存へと踏み込んでしまったのは、この瞬間だったのかもしれない。

 結果的に、ケイにとってこのときの「大勝ち」は幸運なんかではなく、不幸を引き当てる「リーチ目」だった。

 *

 勝負続行。それまでの好調がうそのように、15万円はスロット機のなかに吸い込まれていった。

 いや、一時的にツキが落ちただけ。もう少し資金があれば勝てる──。根拠などかけらもない。自分勝手な確信、というより妄想に背中を押されて、消費者金融にUターンした。

 再調達した分も失い、さらに借金……。もう止まらなかった。ギャンブルにおける、お決まりの負のスパイラルにのみ込まれていた。やはりこの日がターニングポイントだった。

 かつて味わった興奮が体内に蘇ってくると、もう、後戻りはできなくなった。

 それからは、家庭でも警察署でも、いつもパチスロのことが頭から離れなくなった。刑事としての仕事はきっちりやっている。皮肉なことだが、ケイの性分でもある生真面目さが、結果的に彼自身を追い込んでいくことになる。

 現場で仕事に没頭している間は、自分のダメな部分を忘れている。が、職務から解放されると、いつだって罪悪感が襲ってきた。刑事としての責任感と、パチスロ狂いの二面性。かつて足を取られて動きが取れなくなっていた泥沼に、再び踏み込んでいる実感。そんな恐怖を紛らわすために足を運ぶ場所が、結局はパチンコ店だった。本末転倒の悪循環ながら、スロットマシンと格闘している間は、つかの間、自己嫌悪から逃れることができていた。

 これだけは、絶対に妻に知られるわけにはいかない。休日にパチンコ店に行くために、事件、残業、多忙などと、場当たり的なうそをつき続けた。再び底の見えない深い沼に両足を取られ、ズブズブと沈み込んでいく。パチンコ店に足を運ぶ回数が増えれば、その分、借金は加速度的に増え、間もなく、消費者金融の利用限度額がいっぱいになるのも自明の理だった。

 臨時収入の機会がない公務員にとって、返済のあてはまったく思いつかない。わずかに残っていた理性が壊れ始めていた。このころの関心は、「どう借金を解決するか」ではなく、「どうすれば次の借金ができるのか」に移っていた。しかも、迫ってくる借金返済をやりくりするために、新たな借金をするのではない。この期に及んで、パチスロの資金が欲しかったのだ。

突然やってきた破綻の瞬間

 終焉は突然にやってきた。

 ある日、仕事から帰宅すると、滞った返済の「督促はがき」が自宅に届いていた。消費者金融数社への借金は総額250万円になっていた。それを見つけた妻は激怒した。パチスロへの病的な依存、それに借金癖が妻の両親、親戚全員に知られてしまった。

「何をやっているんだ! お前は警察官だろう」

 誰もがそう責め立てた。

 結果的には、前回同様に自分の親が借金を肩代わりしてくれた。だが、もう警察にはいられないと思い込み、退職願を出した。違法行為に手を出したり、消費者金融のブラックリストに載ったりしたわけではないので、本来なら仕事を辞める必要はない。辞めたくはなかったが、ほかの選択肢が思いつかなかったのは、ケイの生真面目さなのか、それとも、かぶり続けていた仮面をはぎとられた決まり悪さゆえだったのか。

 妻に対する、うそと裏切りの代償は、結婚生活の清算で支払うことになった。ゼロに戻った借金と引き換えに、ケイは仕事、そして妻子を一度に失った。

 *

 しばらく実家に戻って、家業の漁業を手伝って過ごした。

 居心地がいいはずはない。親の目は冷たく、それから逃れようと、ぶらぶらと外に出れば、いやでも県警のパトカーが目に入る。

 次に疑心暗鬼が押し寄せてきた。近所の人たちから「仕事を辞めて、離婚した元警察官」と後ろ指をさされているのではないか、と。実際には、そんなことはなかったかもしれない。だが、逆の立場だったら、自分のような人間に、斜め上から見下した視線を向けていたはずだった。相変わらず、人を勝ち負け、上下関係などで、表層的に判断する人間なのだ。

 身から出た錆と、最初は多少、割り切ってはいたものの、時間とともに心境は変わっていく。徐々に「なんでオレがこんな目に遭わなければならないんだ」と身勝手な考えへと変化していった。生真面目だった性格が、徐々に荒み始めていた。

 変わっていくわが子を心配した母親から、九州北部のある病院へ入院を勧められた。ギャンブル依存の治療を行っているという。

 入院だと? ふざけるな! 自分は病気じゃない。治療の必要などどこにある──。

 そう考える一方で、居心地の悪い実家での生活はいたたまれなくなっていた。「ここではないどこか」に行きたかった。素直に母親に従ったふりをして、現実逃避のための入院を決めた。

患者側に治そうとする意志はないのだから、病院に入っても治療の効果が出るはずはない。明らかにムダな入院生活だったが、遠く兵庫県から来ていた女性に病棟で出会った。

 自分と同様、彼女もパチンコへの依存で入院させられていた。似たもの同士、すぐに親しくなり、男女として付き合うようになった。

 数週間もの意味のない入院生活を終え、地元に帰ったが、実家にいたくない気持ちは、かえって強くなっていた。ここから出たい。すべてリセットしたい。知らない土地で彼女と一緒にやり直せば、絶対に自分はうまくいく。

 そう確信して、荷物をまとめた。自宅を出る前、親が掛けてくれていた自分名義の保険をすべて解約し、保険会社から支払われた入院給付金と一緒に自分の銀行口座に移しておいた。

生きる目的はパチスロだけに

 地元を後にすると、兵庫県に直行して、彼女が住むアパートに転がり込んだ。自分の口座には総額で120万円ぐらいあった。当座の生活資金としては十分な額だ。まもなく自分名義で神戸市内のマンションを借り、彼女がそこに引っ越してきた。金があるうちに仕事を見つけて、2人でやり直せばいい。ここからスタート・オーバーだ。

 だが……。

 皮肉にも、手元に現金がある余裕が、ギャンブル依存という名の疾病を持つ2人から、真剣に仕事を探す意欲を奪っていった。毎日、2人でパチンコ店に入り浸り、自堕落な生活を続けていた。手持ちの現金は減っていき、いよいよとなったところで、時給の高そうなパチンコ店でバイトを始めた。先々のビジョンがまったくない生活は1年弱も続いた。

 彼女との関係が終わりを告げたのは突然だった。激しい言い争いがきっかけとなって、彼女がマンションを出て行った。

 独りぼっちになった。バイトは続けていたが、生活はさらに荒れた。長く放置した悪性腫瘍のように、病魔はケイのすべてをむしばんでいった。少し前まで、地域の安全を守るという目的のために必死になっていたのに、ケイが生きている理由はパチスロを打つことだけだった。バイトの時間以外にはやることがないので、結局、パチンコ店に入り浸る。

 間もなく、手持ちの金は尽き、家賃さえも払えなくなった。本当の自暴自棄になり、最後のバイト代を手にマンションを出た。

 かつて犯罪を取り締まり、書類送検する側だったケイが、書店での万引きで捕まり、検察に送られたのは1か月後のことだった。

コメント


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://alephnoda.blog85.fc2.com/tb.php/1763-7af9df6a

 | HOME | 

プロフィール

alephnoda

alephnoda

野田成人のブログです
メール返事欲しい人は氏名・電話番号必須だけど、書いたからと言って返信が保証されるわけでもありません。結局人間関係は共通の関心ごとがないと成立しないのであって。私が内容に関心を持った場合にやり取りが成立します。
ブログ手伝ってくれるスタッフ募集中
メールは上の画像の vv9919662014 @ じーめいる。コム(gmailです)

月別アーカイヴ

2037-12 : 1
2024-02 : 3
2024-01 : 5
2023-12 : 4
2023-11 : 5
2023-10 : 5
2023-09 : 6
2023-08 : 5
2023-07 : 4
2023-06 : 4
2023-05 : 4
2023-04 : 3
2023-03 : 4
2023-02 : 3
2023-01 : 6
2022-12 : 3
2022-11 : 4
2022-10 : 5
2022-09 : 3
2022-08 : 5
2022-07 : 4
2022-06 : 5
2022-05 : 4
2022-04 : 4
2022-03 : 6
2022-02 : 5
2022-01 : 2
2021-12 : 4
2021-11 : 5
2021-10 : 7
2021-09 : 5
2021-08 : 4
2021-07 : 4
2021-06 : 4
2021-05 : 4
2021-04 : 5
2021-03 : 5
2021-02 : 5
2021-01 : 5
2020-12 : 5
2020-11 : 5
2020-10 : 5
2020-09 : 7
2020-08 : 5
2020-07 : 7
2020-06 : 5
2020-05 : 7
2020-04 : 1
2020-03 : 5
2020-02 : 5
2020-01 : 5
2019-12 : 5
2019-11 : 4
2019-10 : 7
2019-09 : 4
2019-08 : 5
2019-07 : 2
2019-06 : 5
2019-05 : 6
2019-04 : 3
2019-03 : 6
2019-02 : 5
2019-01 : 5
2018-12 : 6
2018-11 : 4
2018-10 : 4
2018-09 : 4
2018-08 : 4
2018-07 : 6
2018-06 : 6
2018-05 : 8
2018-04 : 6
2018-03 : 7
2018-02 : 5
2018-01 : 5
2017-12 : 5
2017-11 : 4
2017-10 : 2
2017-09 : 2
2017-08 : 4
2017-07 : 4
2017-06 : 6
2017-05 : 4
2017-04 : 6
2017-03 : 6
2017-02 : 6
2017-01 : 5
2016-12 : 5
2016-11 : 4
2016-10 : 3
2016-09 : 3
2016-08 : 4
2016-07 : 4
2016-06 : 5
2016-05 : 3
2016-04 : 6
2016-03 : 3
2016-02 : 4
2016-01 : 6
2015-12 : 7
2015-11 : 9
2015-10 : 7
2015-09 : 5
2015-08 : 6
2015-07 : 8
2015-06 : 6
2015-05 : 8
2015-04 : 8
2015-03 : 8
2015-02 : 11
2015-01 : 11
2014-12 : 5
2014-11 : 8
2014-10 : 9
2014-09 : 9
2014-08 : 7
2014-07 : 6
2014-06 : 5
2014-05 : 5
2014-04 : 9
2014-03 : 9
2014-02 : 6
2014-01 : 5
2013-12 : 2
2013-11 : 5
2013-10 : 8
2013-09 : 8
2013-08 : 9
2013-07 : 13
2013-06 : 8
2013-05 : 12
2013-04 : 8
2013-03 : 10
2013-02 : 9
2013-01 : 12
2012-12 : 6
2012-11 : 10
2012-10 : 9
2012-09 : 4
2012-08 : 9
2012-07 : 10
2012-06 : 8
2012-05 : 8
2012-04 : 6
2012-03 : 13
2012-02 : 14
2012-01 : 15
2011-12 : 9
2011-11 : 14
2011-10 : 6
2011-09 : 10
2011-08 : 8
2011-07 : 9
2011-06 : 11
2011-05 : 9
2011-04 : 6
2011-03 : 11
2011-02 : 4
2011-01 : 6
2010-12 : 6
2010-11 : 7
2010-10 : 9
2010-09 : 10
2010-08 : 10
2010-07 : 7
2010-06 : 7
2010-05 : 7
2010-04 : 6
2010-03 : 6
2010-02 : 7
2010-01 : 4
2009-12 : 2
2009-11 : 3
2009-10 : 5
2009-09 : 3
2009-08 : 4
2009-07 : 9
2009-06 : 10
2009-05 : 10
2009-04 : 13
2009-03 : 7
2009-02 : 1
2009-01 : 4
2008-12 : 9
2008-11 : 9
2008-10 : 6
2008-09 : 7
2008-08 : 7
2008-07 : 8
2008-06 : 5
2008-05 : 4
2008-04 : 7
2008-03 : 7
2008-02 : 7
2008-01 : 7
2007-12 : 10
2007-11 : 8
2007-10 : 5
2007-09 : 8
2007-08 : 12
2007-07 : 7
2007-06 : 15
2007-05 : 18
2007-04 : 9
2007-03 : 17
2006-04 : 1
2004-04 : 6
2004-03 : 8
2003-12 : 1
2003-09 : 2
[RSS 1.0]  [RSS FEED]