クソ物件10
再建築すらできないクソ物件中のクソ物件、これを売却依頼した話続き。
ファミレスで営業マンと話をしてから5日程して連絡が来た。
「決まりました!」
(え??)
一体いくらで売れたのだろうか?
「780万で買付もらいましたんで」
買付とは、買付証明書。つまり、このクソ物件を780万円で買いますよ、ということにサインした書類なのである。まだ契約ではないが、不動産業界では、買主が買付を売主側に提出することにより、契約に話が進む。
780万ということは、利回り16%、元の提案通りの数字だ。しかも銀行融資の条件付きではなく、全額現金買いという小金持ち。銀行の融資条件とは、「銀行がお金を融資してくれなかったら、契約は白紙解除なので、一切お金のやり取りは発生しません」という解除条件なのだ。よって融資条件が付くと、契約しても徒労に終わることがあるのだが、今回はその可能性も無い好条件。
今だから分かる話だが、不動産業者間データベース「レインズ」に掲載される物件は、二つに分かれる。一つは、掲載された瞬間、取り合いが始まり、一週間経たずに瞬間蒸発する良物件。もう一つは、誰も手を付けないまま放置され続けるクソ物件。
一旦クソ物件状態に陥ると、皆「これは何か問題ある物件じゃないか」と疑心暗鬼になり、何周もグルグル回転してしなびていく回転ずし状態になる。要は、問題があるのに値付けが高い、ということだ。最終的には値下して売るしかない。
では、この川口クソ物件は、どれ程の価値があるのか?
そもそもの話、不動産業者も多数参加する競売で、190万でも誰も買わなかった物件である。仮にレインズに乗っても、誰も買わないだろう。当時それ程業界経験も無く持ち金も少なかった小生が、ホームレス支援で使うために買える物件が、それ位しかなかったから買っただけなのだ。
今から考えれば「タダでも要らない」というような物件だが、なぜそれが780万で売れるのか?
一つには、既に入居者が入っていて家賃収入が確定する収益物件は、自分が住むために買う実需の物件とは、別の評価が付くのである。それが利回りだ。
もう一つは、営業マンの力量である。100万円を一年定期で預けても、利息が何十円という超低金利時代では、利回り16%は驚異的である。言ってしまえば、そのメリットを持って、営業マンが買い手を嵌め込んだ、と解することが可能。
では実際にどれ程の力量が営業マンにあったのか?このケースでは、最初に小生と話した売主側元付け業者以外に、買主を見つけてきた買主側客付け業者、更にもう一人「アンコ業者」が介在した。通常は売主側元付け業者と買主側客付け業者しかいないことが多いが、その間にも更に別の仲介業者が介在する場合に、「アンコ業者」と呼ぶ。間に挟まれているから「アンコ」なのだ。
具体的には、最初の売主側元付け業者が
「この物件、780で売れたら仲介手数料の他にいくらか出せるよ」
ということで業者間に話を振り撒いたのだろう。その結果、アンコ業者が買主側客付け業者と買主を連れてきた、ということだ。高い利回り物件を探しているお客をどれだけ連れてこられるか、集客ネットワークがあるか、というのが営業マンの力量。
この力量を発揮させるのに、仕切値600と売値780の差額が効いた、ということである。小生からすれば、売買契約書には780万と記載されているが、手元には600しか入らない。差額180万は買主業者・売主業者・アンコ業者で山分けとなる。逆に言えば、仕切値が高い場合には、売値との差額が少なくなる。そうなるとアンコ業者らとも山分けしづらくなる為、営業マンもモティベーションがそれ程上がらない、ということである。
(つづく)
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