労役
労役とは、罰金を支払う代わりに拘置所などで行う労働の事を指す。
例えば少額の窃盗などで、30万円の罰金刑に処せられたとする。窃盗を犯す人は、お金が無く支払えない事が多い。そういう場合は、労役場で留置され、一日当たり5000円の換算で30万の支払いを終えるまで強制的に労働させられる。
小生が支援する元ホームレスにも、このような労役を科せられる人が少なくない。今回もそのようなケース。
「石田(仮名)さんが連絡付かないんで、部屋を見たら空っぽなんですが。」
同居人の伊藤(仮名)さんから連絡があったのは、先月頭頃である。
「石田さんが水道光熱費を支払う当番だったから、彼にお金預けてたんですけど…」
どうやら他の人から集めた水道光熱費を支払わずに、持ち逃げしたようだ。穴が空いた光熱費は、こちらで負担するしかない。
石田さんが失踪してから約半月後、関西のとある警察署から電話連絡が…。
「そちらに石田さんという方が住んでいらしたことはありますか?」
「はい、いましたけど、彼がどうしたんでしょうか?」
「詳しくは話せないのですが、今ちょっとこちらにいるんです。」
「逮捕されてるってことですか?」
「…そうですね、でもそんなに長くはならないと思います。」
「こちらの電話番号を伝えて頂く事はできますか?」
「分かりました、釈放されたら電話するように言っておきます。」
以上のような電話の報告を女房から受けて、小生も警察署にいるであろう石田さん宛に手紙を書いた(末尾添付)。
すると2週間程して、彼から返信が来た。
内容は、自分のやった事を詫びると共に、これから罰金30万円分の労役に入らなければならない、という内容だった。
返事をくれたという事は、こちらを信用してくれたという事だろう。戻ってこれる可能性はあるかも知れない。何だか、元教団の下向と再出家みたいな感じの話ではあるが(微笑)。
彼は母子家庭で、かつ母親との関係も悪い。そのような人が、人生の後半で、刑務所を何度も出入りするようなケースを、小生も見てきている。そのような人で現在服役中の人も支援中。
彼がそうならない事を祈る。
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石田さんへ
前略、関西で逮捕されたという話で少し驚いています。しかしすぐに出られるという事ですから、少額の窃盗か何かでしょうか?いずれにせよ、私としては石田さんがお困りのようであれば、戻ってきて頂くのは構わないという事です。老婆心ではありますが、親との関係が良くなかった貴兄に取ってみても、信頼関係を維持しておくという事は悪くないのではないかと思うわけです。
水道光熱費を持ち逃げした件が後ろめたいかも知れませんが、それは同居人のTさんも同じです(こちらが立て替えて、まだ未精算)。同じ住居だと伊藤さんとの関係も後ろめたいかも知れませんので、別の物件に入って頂く手もあります。まだこちらの保護は切れていません。
もしこちら迄の交通費が無ければ、こちらから初乗り分の運賃他を口座に振り込みます。初乗りでJRで大宮まで来て頂いて、大宮の改札でこちらが精算します。電話が無くなったようですが、そこは公衆電話でやり取りするしかないわけですが。
私は困っている人を助けるのが仕事です。貴方はまだ若いですが、将来何度も警察や刑務所のお世話になるのを繰り返す事にならないよう、生活の基盤を安定させた方がいいと思います。連絡下さい。草々。
平成31年4月18日
野田成人
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