ケンカツ6
失踪を繰り返す我が儘婆ちゃんを引き受けたが、西区社協と東区の間でババの押し付け合い。小生も加わって、東区とのババ抜きの駆け引き電話続き。
京極「野田さん、我が儘言うなら連れて帰らないって、それは無責任ですよ。」
小生「え、ちょっと待って。無責任ったって、こっちだってやりたくてやってるわけじゃないよ。今晩行くところがない、引き受け手がない、って所で、じゃあしょうがないから数日だけってことで受けただけだから。」
京極「引き受けた以上ちゃんと責任持ってくださいよ。」
小生「責任ったって、どこまでこっちが責任持つ筋合いありますか?何を根拠にどこにどう責任があるんですか?」
京極「だから福祉では、元の所に返すのが筋だから……」
小生「いやそれは西区社協だって同じですよ、私と東区と同じ立場ですよ。勝手に失踪繰り返しといて、単に窓口に文句を言いに来た我がままな婆ちゃん、そんだけですよ。そんなの相手にどこまで責任持たなきゃいけないって話になるんですか?」
京極「……」
小生「そんな自分の我が儘で、勝手に失踪しといて、『泊まるところ用意しろ、ここは気にいらない』つうなら、勝手に出てけよ、って話でいいじゃないですか。そんな相手に、『あ~お婆ちゃん、出て行かないで~、何が気に入らなかったの~、ごめんね~』とかやれっての?アホらしい。」
京極「……」
小生「そりゃ社協とか福祉課の立場なら、そういうことは職務上言えないって分かりますよ。だから私から本人に言って差し上げましょうと言ってるんです。私は別に福祉タクシーでもないし、この件で婆ちゃんからも福祉課からも一銭も貰ってませんからね。」
京極「……」
小生「私の方から言いますから。『我が儘ばっかり言ってたら、どこも相手してくれないからね。頭下げんなら西区に連れてってやるけど、頭下げないなら勝手に路上でくたばれや』って。だから東区も突き放した対応して下さい。」
京極「とにかく今日こちらに来て下さい。」
小生「分かってます、それは行きますから。」
ここで一旦電話は終了、用事を済ませてから東区役所に向かう。
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(もし仮に東区役所でも、宮田の婆ちゃんが我が儘を通したらどうするべきか?)
(差し当たりネットカフェでも泊まれるように、二万位くれてやるか?)
現に彼女は、西区社協に行くまでは、ネットカフェにいた。お金が無くなってから苦情を述べに来たのだ。そんなことを考えながら東区役所に着く。
小生「京極係長いますか?」
役人「少々お待ちください。」
カウンターで係長を待っていると、相談室から宮田の婆ちゃんが出て来て後ろのソファーに座った。しばらくして、係長が現れた。
京極「野田さん、今回の件で私は野田さんのこと見損ないました。」
小生「え、そうですか、でもアパートをお婆ちゃんが出て行きかけた実況中継のあと、係長さんが『こちらは待ち状態ですね』って言うから、こちらまで連れてきて…」
京極「ちょっと聞いて下さい。」
小生「……」
京極「これまで野田さんは、困った人を助けているんだと思ってましたが、今回の対応には失望しました。」
小生「そうですか。」
京極「とりあえず宮田さんは、こちらで保護の申請を受け付けましたので、もう連れて行っていただく必要はありません。」
小生「!」
京極「ただ申し上げた通り、今回の野田さんの対応は残念な内容だったので、今後の対応はそれも念頭に置きながらということを、一言申し上げておきます。」
小生「……分かりました。」
京極「以上で結構です。」
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(連れて帰れというのは、水際作戦そのものだ)
小生との電話やりとりが、福祉課係長としての矜持に触れたのだろうか。あるいは、宮田の婆ちゃんが小生に頭を下げずに置いていかれたら、またそれはそれで困った事態になる。そう先回りして、保護申請を受けるようにしたのであろうか。
いずれにせよ、小生としては、東区役所が自らババを引いてくれたことに安堵した。
さーすが東区役所福祉課京極係長!ドラマの主人公みたいだね!
(つづく)
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