処罰感情2
処罰感情で書いたTさん。こちらの説得も虚しく、Mさんのことは役所に告げ口してしまったようだ。それが先月30日頃の話。早速役所から連絡が来た。
役所「Mさんがもう失踪していないということを同居人から聞いたのですが、もうこちらとしては、月末までに処理をしたいのですが…」
役所が月末までに処理をしたい、というのは、事務処理上でそうしてくれた方が助かる、という趣旨でもある。尤もこちらも役所には、市外からやって来て、その半分くらいは失踪してしまうホームレスの保護手続きをお願いしている。そうである以上、役所側の言い分も飲まざるを得ない面もある。
小生「そちらの立場も分かりますが、まだちょっと失踪には早すぎます。こちらとしても、本人が戻ってくる可能性を出来るだけ残しておいてあげたいという気持ちもあります。実際に、別の役所から『廃止処理のための契約解除証書をお願いします』と言われて出して、その日の夕方に本人が戻って来て、大慌てで処理をやり直してもらったこともありますので。」
役所もこちらの言い分を飲んでくれて、取りあえず次の支給日である6月5日まで猶予することになった。住居にいないにも関わらず、お金が貰える支給日だけひょっこり役所にやってくる。そんな虫のいい人間も、ホームレス連中には少なくないのだ。
すると支給日前日に、女房から以下のようなラインが来た。
「今、Mさんから電話がありました。山谷にいて1円もお金がなくて帰ることもできないって。5万近くあった保護のお金、もう全部遊んで使っちゃったそうです。5日に役所に行かないともう保護は切れるよっていいました。とりあえず一時間後にまた電話してって言いました。」
Mさんは当然携帯もないので、公衆電話からフリーダイヤルにかかってきたのである。こちらから連絡をすることは出来ない。乗車証明書を利用して岩槻まで来るように伝えてもらう。
ところがメトロで乗車証明書をもらおうとした所、「東武からこちらに連絡をもらわないとダメ」という返事が来てしまった。う~ん、つい数か月前に都内から乗車証明書をもらって帰って来たFさんは、どうやって帰って来たのだろうか。悩んでいると、またMさんから電話が来た。
「通りすがりの人にお金をもらって乗ることができた」
乗車証明書の場合は、結局降車駅までこちらが行かないと乗車できない。そういうことで確定のようだ。これは仕方ない。
岩槻駅まで迎えに行ってMさんの話を聞くと、元の住居には戻りたくないという。何でもTさんの行動がどうにも容認できないとのこと。内容はここでは言えないが、ちょっと驚いた。それで住居を別の所に変えてほしいという。無理ならもう山谷に帰るとか。
初回支給の5万円を10日余りで使い果たした挙句の弁には、
(虫のいい話だなぁ…)
毎回そう思いつつ、しかしまだ初回支給をもらったばかりで、どういう人間かは不明な所もあるから、「歩いて帰ってこい」とは言わなかったわけだが。
まだ片付け中のマンションの部屋に、家賃滞納中→ほぼ失踪確定の増田さんという人がいた。増田さんはもういないだろうから、取りあえずその部屋に入れるだろうと思って、Mさんをそのマンションに連れて行った。ところがところが、失踪確定と思っていたこの増田さん、厚かましいことにまだ部屋の中で寝ていた。
「あれ、増田さんいたの?家賃どうなったの?」
骨折で休業しており、お金が無いという事で2カ月程家賃を待ってあげたが、支払いがなく電話も取らない、この数日前にマンションに行ったがいなかったので、失踪確定かと思っていたのだ。その部屋にMさんを住まわせようとした計算が狂う。
「すいません、明日入れようと思ってたんです。明日月曜日入れます。」
ホントかなぁ…と思いつつ、同じマンションのまだ片付いていない部屋にMさんを連れて行き耳打ち。
「あの人家賃払ってなかったからもう出ていったと思ってたんだけど、計算が狂っちゃった。このマンション片付いてないんで、片付け手伝って自分の寝るスペース作って下さい。ゴメンね。ホント困った人一杯来るからさ。」
「分かりました」
掃除は得意みたいで、Mさんは片づけを始めた。
この夜、増田氏は荷物を持って消えた。Mさんが新たに入って来たということもあろうが、増田氏は元々こちらが支援団体というのを見越して、催促があるまで居座るつもりだったようだ。
後から女房に聞いたが、Mさんは一度山谷に戻ったところ、知り合いから以下のように言われたらしい。
「野田さんは優しい人だから、何とかしてくれると思うよ。それでダメだったら戻って来なよ。」
う~ん、こういうのを聞くとなぁ……。
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