前科者2
元ヤクザのYさんが、シェアハウス同居人Mさんのアイコスを盗んだ。Mさんは警察に訴えたいとのことで、やむなく小生が110番通報する。30分ほどすると、まずバイクに乗った警察官が2人やって来た。
警察「あなたが盗んだの?」
小生「いや、違います、あっちの部屋です。」
警察「あなたはどういう立場ですか?」
小生「大家です。」
しばらくすると応援の警察官が4人程やって来た。被害は電子タバコ一個が盗まれて壊れて帰って来た。それだけの事件ではあるが、6人の警察官。
大家としては、店子が警察沙汰トラブルで逮捕されて嬉しいことは一つもない。とは言え、被害に遭った店子を放置するわけにも行かない。それでも一応Mさんには自分の胸中を伝えておいた。
小生「あなたが怒っているのは分かるし、Yさんがやったことも悪いことだから、警察沙汰も仕方ないことだとは思う。でも、私としてはYさんも店子だし、彼が逮捕されて嬉しいことは何もないの。」
M氏「……」
小生「だから、もし彼が反省して弁償するっていうなら、どっかで矛を収めて欲しいんだけど。」
M氏「けど、もう同じ所には居たくないです。」
小生「それは分かったから、逮捕されなかった場合は、部屋の手配も何とかする。」
Mさんにそのように断った上で、二階のYさんの部屋に戻る。Yさんの部屋には、警察官が4人程彼を取り囲んでいる。警察官越しに小生が声をかける。
小生「Yさん、反省して弁償するっていうなら、Mさんも被害届は出さないっていう話なんだけど、どうするの?」
Y氏「いや、いいです。」
警察「じゃああなた、また刑務所戻るの?」
恐らくそうだとは思っていたが、やはり前科者である。
Y氏「もう、ここ出て行きますから、いいです。」
小生「ここ出て行ったって、刑務所に入りたいの?ここより刑務所の方が居心地いいと思ってるの?外出られないんだよ?」
Y氏「……とにかく、いいです。」
同じような呼びかけを二回程繰り返したが、全くダメ。思考が行き当たりばったりというべきか、近視眼的というべきか。多くのホームレスがそうであるように、余り深く物事を考えてない。警察官も本人を優しく諭すような問いかけを繰り返しているが、多分ダメだろう。残念ながら痛い目を見なければ分からないタイプだろうか。諭すのを諦めて階下に降りる。
小生「反省しないし弁償もしないみたいだから、もう逮捕されるしかないと思う。」
下に戻ってそのようにMさんに説明し、小生はここで引き上げることにした。
現場から引き揚げたのが夜の19時頃。それから4時間程してもう眠りに落ちようという頃に電話がかかって来た。下四桁110番。地元の警察である。やはり店子の犯罪を通報して得になることはない。どころか通報者として後々色々面倒くさいだけである。。
警察「あの~夜分すいません、先ほどの事件の件なんですが…」
小生「…はあ」
(つづく)
Subject
縁起と止滅
空無辺。何も無い処(ニルヴァーナ)から心によって無限の範囲の有(実体)が生まれる。
識無辺。識別は、各自の心によって(その対象の実質/本体がどうであれ、その通りの、あるいはそれとは異なる)無限の通りに存在できる。
この語義とその脈絡を理解する者に、そのあらゆる苦しみは止まる。
三毒
『あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。』
他人の愚痴を聞いて一喜一憂して時を過ごしている間にも、命の火は刻々と燃え、寿命は尽きていく。何故、そんなことを捨て光明を求めないのか?、と。
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