あれふこま3
「あれふこま」=アレフ経理部本体の隣室で暴力事件に遭遇したSさんだが、無事に初回の保護費を受け取ることが出来た。CWと別れた後、社会福祉協議会に行き、お金を返済する。その後、小生と家賃他のお金の清算をすることになった。
小生「炊飯器は什器代で新しいのを買って、こちらから貸し出した炊飯器は返してください。」
S氏「はい、分かりました。…… テレビはどうすんの?」
什器代は、役所に申請すればお金を出してくれる。これは新規で生活を始めるのに必要な炊飯器などを揃えるための費用である。但し品目によっては出ないこともある。
小生「テレビは什器代としては多分出ないんです。だから申し訳ないけどこちらのを買い取りして頂くか、月々レンタルで支払って頂くかどちらか。」
S氏「え、そんなん聞いてないよ。」
小生「いや、それは各備品はこちらからの貸し出しで、保護費が出たら買取か返却かレンタルって説明書きに書きましたよ。」
S氏「じゃあテレビは返すよ、携帯があるから、テレビは要らない。室内アンテナは?」
携帯でワンセグ受信できるからテレビは要らないというのだ。ここまでは極々普通の穏やかな会話であったのだが…
小生「じゃあそれも返してください。」
S氏「そこまで言うんだったら出て行くよ!出て行けっていうんだろ!!」
全く突然降ってわいたように怒り出した。
小生「え!?いや、別にそんなつもり全くないんだけど…」
S氏「もう出て行くから!」
小生「いやいや、室内アンテナを返してっていうのが気に入らないなら、それは返さなくてもいいけど、それだけあってもしょうがないんじゃ…。」
戸惑う小生を残して、Sさんは駅の方に歩き出した。これはもうダメかもしれない。そう思いながらも、念のため駅に向かうSさんに呼びかける。
小生「待ちなさい!あなたさっき、自分で出て行くときはキチンと相談するって言ったばかりじゃないか!出て行くというなら、キチンと役所にも説明していきなさい!!待ちなさい!!」
Sさんはこちらを振り返ることなく駅に向かう。
(まあしょうがないか…)
その後ろ姿を見て、どこか清々したものを感じつつも、役所に対しては後ろめたさを感じていた。それはSさん自身が役所に対して犯した約束違反もそうだが、失踪するホームレスばかり連れて来るとしたら、こちらの支援活動の信頼性も損なわれてくる。大分小さくなったSさんの後姿を駅方向に見ながら、小生は市役所に戻ることにした。窓口で先ほどの係長を呼び出して、つい先ほどあった出来事の詳細を説明した。
係長「え~、なんですか~、それ。だったら保護費返せよって話ですよね~。」
小生「いや~、なんか申し訳ないです。彼には『出て行く前にはキチンと役所に相談するって話したばかりなんだから、説明しに行きなさい』って言ったんですけど…」
係長に加えCWと三人でしばらく話していると、何とSさんが階段から昇ってくるではないか。
S氏「なんだお前!!」
小生を見るや否や、興奮状態で怒声を浴びせながら近づいてきた。これは一波乱ありそうだ。
(修羅場につづく)
コメント