業界7
一番手で買付を入れて、契約まで終わった1900万円のアパート(売買金額1850万)。手付金200万円も払ったに関わらず、先方がいきなり契約解除を申し入れてきたとのこと。常々小生の素性がばれるリスクについては念頭に置いてきたが、それがついに現実のものとなってしまったようだ。
小生「私の素性の問題ですか?」
上席「う~ん、そこのところは何とも、売主様の意向ですから。」
小生「……そうですか。」
売主は相続人3人である。3人集まれば文殊の知恵ではないが、オウム信者を見れば右見て左見て「関わるのはよそう」という結論にもなろう。これをひっくり返すのは無理だろう。ならばどう後始末してもらうか、である。
小生「納得できない話ではありますが、こっちは手付金払ってるんですから、手付解除ならしょうがないですね。」
上席「白紙解除では無理ですか…」
手付解除とは、売主から契約破棄する場合、既に受け取った手付金200万円を倍にして返すことを言う。買主から契約破棄する場合は、先に渡した手付金を放棄することになる。つまり200万円の手付金をどちらか約束を破った方が損するということだ。これに対して白紙解除は、その200万をそのまま買主に返して、どちらも損得なしの話にすること。
小生「お宅ね~、私だって業者やってるんですよ。そんな手付金まで入れた契約をむざむざタダでチャラにしてくれって、そんな虫の良い話受けられるわけないでしょ?お宅らが逆の立場なら損害賠償寄こせって言うでしょ?」
上席「……そうですね、分かりました。売主に話してみます。」
話が終わると仲介の若い営業マンと上席は、そそくさと消えて行ってしまった。何とも気まずい話だった。さて困ったのは行き場を失ったHさんである。関越道高架下からアパートに移れると期待して、自転車に荷物を載せてきたに関わらず。
小生「Hさん、ゴメン。色々詳しく話せない事情もあるんだけど、物件の売買がキャンセルになってしまったんで、ちょっとすぐにはアパート入れなくなっちゃった。本当にゴメン。」
H氏「ああ、そうですか… どっか場所無いですかね。」
小生「とりあえずまたアパートは購入する予定だけど、差し当たりルームシェアで我慢してくれるんだったらK市に戸建ての一階が空いてるけど。そこでもいい?」
H氏「じゃあ差し当たりそこでお願いします。」
年の瀬の師走で寒さもこれから厳しくなろうかと言う時期。当初はルームシェアに難色を示していたHさんだが、ここは我慢してもらうしかなかろう。車でK市まで連れて行った。
翌日仲介の上席から電話がかかってきた。
上席「売主様に昨日の話をしたんですが、『白紙解除じゃないのか!?』ってなこと言われまして…」
全くふざけた売主だ。相手の事を自分が気に入らないからキャンセルしておきながら、タダで話をおさめてくれとは。
小生「昨日話した通りです。こっちは手付金200万出しているわけですから、手付解除の倍返し(400万)でないと納得できません。」
上席「分かりました…、一応改めて話をしてみます…」
通常の不動産契約・法律解釈に則れば、こちらが倍返しで400万受け取るべき立場にある。裁判になればほぼ間違いなく勝てるだろう。しかし裁判になれば最低でも数カ月、長ければ1-2年、下手すればそれ以上かかることになる。そうやって争っている途中で、相手方が「分かりました、じゃあやっぱり売ります」みたいな話になった時、こちらに資金がなければ逆に困ってしまう。こちらは現金買いで条件を出していたからだ。となると、裁判になれば他の物件を押さえることも含めて身動きが取れない。
1つには、Hさんに「個室のアパートを用意して上げる」と約束した以上、それをできるだけ早く実行して上げたいというのがあった。もう一つには、できるだけ早く現金を物件に変えておきたいというのがあった。資金を遊ばせたくないという意味でも。相手方は弁護士も入って、仲介会社とも揉めているようだ。さて困ったことになった…。
(つづく)
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